TOP業界人インタビュー >カリスマパティシエの部屋:野澤 孝彦さん

Room No.028  コンディトライノイエス  オーナーパティシエ 野澤 孝彦さん


履歴書

1972年 埼玉県上尾市出身
1988年 日本橋三越内『Café Wien』で菓子作りの基礎を学ぶ
1992年 代々木上原『タッツリー』でウィーン菓子の基礎を習得
1994年 ウィーン『オーバーラ』で欧州修業開始
1995年 ウィーン王家御用達『ハイナー』にて主要ポスト歴任
1997年 南ドイツ『ヴァンディンガー』にて製菓チーフを務めながら製パン技術を取得
1998年 帰国し、都内世田谷の洋菓子店にてシェフパティシエを勤める
1999年 『コンディトライ ノイエス』オープン
2004年 『ブロードカフェ ノイエス』オープン

 

 


インタビュー

アイコンの説明:   野澤 孝彦シェフ   スイーツ大好き委員会

お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いいたします。早速ですが、シェフがフランス菓子ではなく、ウィーン菓子に魅かれたのはなぜですか?
野澤シェフ 伝統がしっかりとしている菓子だったからでしょうか。ウィーン菓子に興味を持ったきっかけは音楽や歴史を通してで、その歴史的背景に魅せられたのかな。
では、シェフはクラシック好き?
野澤シェフ そうですね。もともと体が弱かったものですから、クラブ活動などで運動を思いっきり出来なくて。その代わりというわけでもないのですが、小さい頃からオルガンやエレクトーンに触れ、小学校からはピアノを習っていました。
では、将来の夢はピアニストだったとか?
野澤シェフ そうですね・・・、中学生まではとくに疑問も持たず、将来は音楽の世界で生きていくのかなと考えていましたね。猛烈に練習しなくても周りが認めてくれましたから。
でも高校に入ると、より多くの情報を得て、上には上がいることを知るわけです。小さい頃から音楽家を志し、人生をかけて取り組んでいるレベルの高い人達の中で、音楽家として生きていくだけの覚悟と情熱が自分にはないと、彼らにはかなわないと思ったわけです。
天才肌なのに周囲の方も残念がったのでは?
野澤シェフ そうですね。両親は将来どうするのかと思ったようです。ピアノの他に、書道でも同じように賞などをいただきましたが、同様の理由でその道に進もうとは思いませんでしたから。要するに器用貧乏なのですよ。
音楽だけでなく、書も!!いろんな意味でシェフは芸術家ですね。パティシエも色々なセンスを要求されますものね。でも何が大きな理由となってパティシエの道に?
野澤シェフ 学生時代、世界史も大好きで、自然と音楽の歴史に関する本をたくさん読みました。その時代、音楽家には貴族がパトロンとしてバックについて、貴族社会と音楽は切れない縁にありました。その貴族社会ではお菓子も切り離せない重要な食べ物として必ず登場します。
ふむふむ。
野澤シェフ それと、うちは男4人兄弟で、誕生日ケーキやお菓子を食べるときは争奪。ケーキに対する思い入れは他の同年代の人よりは強かったこともあり、興味の対象も自然とこちらに・・・。それに改めて考えると、母が小さい頃、パウンドケーキやマドレーヌを作ってくれたのですが、飽きることなく最後まで手伝っていたのは私だけでしたから・・・。食べる事と同様に作るのも好きだったのでしょうね。
なるほど。ウィーン菓子とフランス菓子の違いがよく分からないのですが?
野澤シェフ そうですね・・・。現在のフランス菓子の基本は、フランス革命以後の大きな決まりや縛りのない自由な発想から生まれた物なのに対し、ウィーン菓子は400年前からお菓子専門の店があり、貴族が馬車で買いに来る習慣がありました。フランス菓子よりはるかに古い歴史があり、レシピや形にもそれなりの理由があります。
お抱えの料理人が作るわけではなく、私たちのように買いに行くわけですね。
野澤シェフ そうです。だから、揺れる馬車で持ち運んでも崩れないようにしっかりとした物が多いですし、飾りも安定性が高く、構成もシンプル。日本でもよく知られているザッハトルテを思い浮かべてもらうと分かりやすいかな?
なるほど。
野澤シェフ それに対し、今のフランス菓子は、オーストリア貴族の娘が勢力の増していたフランスの貴族に嫁ぐ際に連れていった菓子職人が原点。そこではお抱えの菓子職人ですから、持ち帰りの心配もなく、館内でお皿に盛り付けて出すことを前提に作ればよいので、やわらかい食感の物、形が複雑な物でも問題がなかったわけです。
そしてその職人達が、革命後にお店を作り今に至っているので、こちらは自由奔放なケーキというわけです。
よく分かりました。歴史的背景を知ってお菓子を見ると見方が変わりますね。
野澤シェフ そう、面白いでしょ。歴史好きの私としては、より歴史的な意味合いが深く、変わることなく守られてきたウィーン菓子に魅かれたわけです。でも、全部が全部古いわけではなく、作り手の感性が重要なお菓子もたくさんあります。代表的なのが"モールツァトルテ"。名前の通りモーツアルトをイメージしたお菓子という決まりがあるだけであとは作り手の自由。こんなケーキも多いわけです。
絶妙なバランスが魅力でもあるのですね。でも、修業先を見つけるのは大変だったのでは?
野澤シェフ そうですね。私がこの道の門を叩くころには、諸先輩方がフランスから戻られ、たくさんの技術を広めて始めていましたが、ウィーン菓子を専門にされている方はほとんどいなくて。地元の職人が定期的にレクチャーに訪れていた『カフェ・ウィーン』を皮切りに『タッツリー』で基礎を学び、ドイツ語を勉強するなどの準備をして、本場を目指しました。
オーストリアはドイツ語!!やはり言葉の壁というのはありますか?
野澤シェフ 話せることはやはり大きいですね。私も日本にいる間に語学学校に通い、日常会話に困らないように準備をしました。意思の疎通が図れれば仕事のチャンスも多くなるし、作り方の疑問を聞いたりも出来る。それに相手も気軽に仕事を頼めるわけです。せっかく修行に行くのに小間使いでおわっては意味がないですから。短期間に多くのことを習得できたのはドイツ語をマスターしていたお陰だと思います。
技術を会得するだけではなく、言葉も。本当に海外で活躍される方には頭が下がります。
野澤シェフ 話せるとコミュニケーションが取れますから自分も楽しいですよ。私はオーストリアの名門2店で修業しましたが、出来るだけ早く自分の仕事を済ませて、他の人の仕事を積極的に手伝いました。
そうすることで、自分の部署以外の仕事も覚えられましたし、多くの仕事を経験させてもらえ、便利がられましたね。その積み重ねで主要ポストを任せてもらうこともでき、普通では見せてもらえない仕事を教わりました。最後の頃は、お客さんのオーダーを見て特注のケーキの仕上げをするような大役も任せてもらいましたね。
他にも勉強になったことはありましたか?
野澤シェフ たくさんありますが、特に大きかったのは、ケーキに使う材料を出来る限り厨房で作るということですね。ジャムはもちろんなナパージュやお酒までも手作りしていましたから、たいていの一次加工材料は自分で作れます。これは伝統の味を守る意味でも、自分の味を作るにも大きな財産ですね。
そこまでするからこそ、伝統の味が守れるのですね。シェフはオーストリアの後、ドイツにも行かれていますね。
野澤シェフ 出来れば日本に帰ることなく現地にいたい気持ちはありましたが、修業当初から、当時の社会情勢的に、それは無理なことが分かっていましたから。たまたま友人を訪ねてドイツに遊びに行き、冬のお祭りで忙しかったお店を手伝ったことがきっかけで『ヴァンディンガー』にお世話になることに。
それで、04年にドイツパン専門のお店『ブロードカフェ ノイエス』を出店なさったのですね。
野澤シェフ そうです。『ヴァンディンガー』では、製菓のチーフをしていました。お菓子の分野では学ぶよりも教える側でしたが、そのかわりパンの技術を習得することが出来ました。ドイツではお菓子屋さんよりパン屋さんのほうが格上なので、この技術を習得しないと損だと思いましたから。
日本に帰国して自分のお店をオープンし、ケーキとパンを限られた厨房内で両立させるのは難しいと思っていたときに、マークスプリングス内マークストアの店の話を頂きまして。今はドイツで本格的に修業をしてきたチーフとお互いのアイデアや技術を出し合っていい商品を作れるようになりました。『コンディトライ ノイエス』で出しているパンも今では作り立てを運んできています。
パンを拝見していて、とても健康を気遣っていらっしゃるのが分かったのですが、シェフが特にこだわっている素材などはありますか?
野澤シェフ 今でも色々と試しながらいい物を探している最中です。安全でおいしい物であれば国内外のこだわりはありません。パン用の粉はそれなりに納得がいくようになりましたが、ケーキについてはまだまだですし、卵もかなり変えてやっと那須高原で作られている物に落ち着きましたね。あと、乳製品はどうしても欧州とは違う。これは環境の違いもありますからね。
ウィーン菓子は、私のイメージですが、チョコレートの使用率が多いように思いますが、チョコレートは?
野澤シェフ チョコレートは素材の良し悪しはもちろんですが、それと同じくらいメーカーの方針を気にしています。ご存知の方も少ないかと思いますが、チョコレートや珈琲豆は作れば作るほど生産者が貧乏になるという構図があります。細かく言い出すと何時間あっても足りませんが、子供が学校にも行かず現在の世の中にも関わらず奴隷として働かされていたりする上で生産されている作物なのです。ですから私は、出来るだけ購入したチョコレートの代金が生産者に還元されるシステムをとっている会社のチョコレートを中心に使用しています。おいしいだけでは許されない部分があると思うのです。
カカオの生産の裏にそんな事実があったとは全く知りませんでした。おいしい物を食べる機会に恵まれている人間として、このような事実があることをきちんと理解することは重要ですね。
野澤シェフ できれば、働いても見返りのない生産者が少しでも潤うように援助することが、名門パティスリーのステイタスになればいいと願っています。根底から潤わせることが出来なくても、せめて学校に行けるようにとか、おいしいお菓子を食べさせてあげるとか、小さなことでもいいので。スタートは小さなきっかけだと思うのです。しかし、大きな流れにすることはなかなか容易ではありませんね。ただ、我々のような若い世代がしなければならないことだと思うし、するだけの技術もあると思ってはいます。
バレンタインのときなどに何か出来るといいのですが・・・。
野澤シェフ そうですね。バレンタインは本命、義理に関わらず少なくとも自分が好意を持っている人にあげるものですから、こういった気持ちも伝わると思います。例えば6個入りのチョコレートの1粒がなくて、そこにはこの1粒分が寄付されていることを現すカードなどが入っている。そんな商品があってもいいと思うのです。
私なら買いますね!!自分はもちろん、相手も温かい気分になるのではないでしょうか?1人では小さな力も数が増えれば大きくなりますものね!ぜひ、このインタビューを読んでくださった方にもこういう現実を知り、もし自分が出来る小さな協力に出くわした時には参加してもらいたいですね。シェフがこのような細部にまで心配りをなさるにはきっかけが・・・?
野澤シェフ 初めにも話しましたが、私自身、体が強くなかったので、弱い立場の人に敏感と言いますか、同じ目線で見たり、その人の立場になって考えるわけです。言葉では言いにくいですが、考えるとも少し違うかな、自然と行動しているというのかな。
平和慣れしている私たちには、考えずに行動はなかなか出来ないかもしれませんが、考えるだけでも大切なことですよね。
大切なお話、ありがとうございました。では、最後に次回ご登場いただくシェフをご紹介いただけますか?
野澤シェフ では、『ランドルド』の八木シェフをご紹介します。最近イベントでご一緒することがありまして、大先輩になるのですが、色々とお話しして、勉強させて頂いたのです。
なるほど。お目にかかるのが楽しみです。今後のご活躍お祈りしております。長時間ありがとうございました。
野澤シェフから八木シェフへのメッセージ
名古屋のイベントではお世話になりました。また、ウィーンに関するイベントでご一緒できるのを楽しみにしています。
コンディトライノイエス
おすすめスイーツ

2006/10現在
手前から時計回りの順に、
クワバドトルテ(420円)ローストアーモンドのペーストを加えたチョコレートクリームとチョコレート生地を何層にも重ねたケーキ。
カスタニアンベルグ(399円)ピスタチオクリームと渋皮マロンを焼きこんだタルトにマロンペーストでデコレーションしたケーキ。
タンザニア(420円)タンザニアのチョコレートを使用し、アフリカの大地をイメージしたケーキ。
フィグ(441円)白ワインでコンポートしたいちじくを焼きこんだタルトにカスタードクリームとコンポートのいちじくで飾り付けしたケーキ。
下から照明のショーケースが、シックな色合いが多いウィーン菓子をより華やかに演出。オーソドックスな形が多いとの事ですが、それを感じることはありません。
ウィーン菓子でお馴染みのザッハトルテとアップルシュトゥリューデルはどちらも生クリームを添えていただくのが王道。一度はいただきたい名品。
大人気のバウムクーヘン。日持ちがするので大切な方へのお土産にと大量に買って行く人が多い。遠方から行く場合はぜひ予約を。
素朴でかわいらしい焼き菓子類。親しみやすいものから形の変わった珍しいものまで取り揃う。1つずつ買って色々試してみたい。
ブロードカフェ・ノイエスから直送されてくる焼き立てのパン。クロワッサンやデニッシュなどのリッチな味わいのものから、食パンやドイツらしいパンまで幅広く揃うのもうれしい。
10月中旬頃から登場するシュトーレン。クリスマスを心待ちにしながら薄く切って食べるお菓子。最近では日本でも定着しつつある。
贈り物などに最適な焼き菓子の箱入りのセット。少量の物からたくさんはいった物まであり、好みで詰め合わせもしてもらえる。
クリアケースや白い箱などシェフのセンスが光るギフトセット。色々と入っており、小さくても中身は充実しています。
シンプルだけれど落ち着く温かさを感じる店内。商品も素敵なインテリアに変身する。
天気のいい日にくつろぎたい店外スペース。入り口部分を上手に利用して、落ち着いた雰囲気を作り出している。
もちろん店内にもサロンスペースがあり、お好みのスイーツをゆったりと味わうことも可能。

ショップ情報

コンディトライ ノイエス

  • TEL:045-962-4797
  • 住所:神奈川県横浜市青葉区鴨志田町504-5
  • 営業時間:10:00~20:00
  • 定休日:木曜日
  • URL:http://www.neues.jp

ブロードカフェ ノイエス(ドイツパン専門店)

  • TEL:045-922-6171
  • 住所:神奈川県横浜市瀬谷区五貫目町10-74 マークスプリングス内マークストア1F
  • 営業時間:7:00~19:00
  • 定休日:木曜日

アメリカン・ナッツカフェ

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