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パティシエと職人の素顔パティシエと職人の素顔 洋菓子編10 AZUL(アスール)

スイーツ有名店やレストランで長らくデセール(皿盛りのデザート)を作ってきた青山浩士シェフが、東京・駒込にお店をオープンして丸2年。テイクアウトのケーキとしては限界までこだわった滑らかな食感に、日本人好みの風味豊かな味覚を封じ込めた職人技はいよいよ冴えわたっています。スイーツ好きならぜひ一度は経験したい美味世界を探訪します。

[2008年8月号]

経歴&インタビュー

青山浩士さん

<青山浩士(あおやま こうじ)さん経歴>

1971年
東京都生まれ。
1994年
私立大学経済学部卒業。
1995年
「ル・コルドン・ブルー」で学んだ後、「ダロワイヨ ジャポン」に入社。
1998年
「マダムミクニ」入社後、シェフパティシエに。
2000年
「パティスリー・ラ・ビュット・ボワゼ」入社。オープニングシェフパティシエ。
2003年
「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」オープニングシェフパティシエになる。
2006年
東京駒込に「AZUL」をオープン

青山さんが洋菓子をやろうと思ったきっかけは?

大学4年間は特になにを目指したわけでなく、就職の時期になって初めて「自分の興味ってなんだろう」と考えたんです。もともと料理に興味があって、和食、中華、イタリアン、フレンチとなんでもいいからちょっと勉強してみようと思ったんですね。それで卒業後、バイトでお金を貯めて専門学校の資料を取り寄せたら、そのひとつに「ル・コルドン・ブルー」があった。フレンチは料理もいいけど、お菓子も楽しそうだなと思って、軽い気持ちで入学したんです。もちろん甘いものは好きだったんですが、それまではケーキ屋巡りもしたことはありませんし、まして自分で作ったこともなかったんです。

その時のコースは3カ月で修了だったので、さらにここで勉強を続けようかとも思ったのですが、教授の1人から「もう年も年だし、本当にやりたいなら現場へ行ってこいよ」とアドバイスされたんです。そこで、たまたま求人誌に載っていた「ダロワイヨ ジャポン」に入社しました。

当時は僕は素人で予備知識が何もなかった分、逆に仕事がすごく面白くて新鮮でした。3年間の社員時代、基本的にずっと窯場にいたんですが、当時使っていたオーブンは200度、225度、250度と三段窯で、青山浩士さん生地の色具合を見ながら場所を細かく入れ替え、焼いていくんです。大きな工場ですから、コンベクションオーブンはラックごと入れられるようなもので、温度も非常に高い。そんな情況で「生地の色と状態を見て焼き具合を覚えろ」と言われますから、最初のうちはとてつもなく失敗しました。焼きすぎたり、焼きが甘かったりで、入社後半年くらいは毎日「帰れ!」と叱られて(笑)。でもこの仕事をやりたい気持ちが強かったので、諦めなかったですね。下火が当たりすぎるから、鉄板を2枚入れてやってみて、まだ強いから翌日は3枚、4枚。網を噛ませて様子を見たり。すごく勉強になりました。

こういう形で修行を始めたからか、僕はいまだにオーブンを使うときは「何度で何分」というやり方はしません。例えばフィナンシェを焼くのでも、最初は180度で入れて、生地がプクッとしてきたら何度にあげて...という感じ。その日の様子で生地はいつも違いますから、オーブンの調節もその瞬間の感覚なんです。自分で色を見て、生地をさわって決めていく。それが僕のスタイルになっていると思います。

その後、デセールを作る現場に入られたのですね。

最初に「オテル・ドゥ・ミクニ」に3カ月ほど入って、ミクニのお菓子を勉強し、その後に「カフェテラスミクニズ」でテイクアウトのケーキと、レストランの方のデセールをやるようになりました。テイクアウトの方はマダムミクニのケーキを完全にコピーしたものだったんでずか、デセールに関しては自分で考えなければいけなかったんです。

青山浩士さん ところが僕はそれまでアイスクリームも作ったことがなかった(笑)。またいちから勉強で大変でしたね。この時は大量に本を買って、毎晩研究です。朝は7時頃からテイクアウトのケーキを作って、その後にデセール。しかも「カフェテラスミクニズ」はメニューが1週間ごとに変わるんです。2、3回作って「だいたいわかってきたな」と思ったら、またすぐに次へ取りかかる。その繰り返しです。思い切り体当たりなので、理論理屈に囚われず、直感でいけるようになりました。

その後、ホテルやレストランでデセールを作ることが長かったので、僕自身、どこか料理人の感覚があるのかも知れません。たとえば、料理長からもう出来上がったムースに対し、「味が足りないからお酒を混ぜてくれ」と言われて、普通のパティシエなら引きますよ(笑)。でも僕はちょっと温めて、ゆるくして混ぜたりもする。テイクアウトならダメだけど、デザートとしてならありだと思うし、それが飽くなき味の追求ならOKだと思うんです。

自分の店をオープンするにあたって、どんなお菓子を目指しましたか?

僕はたまたま運良く、本当にいい場所でいい人と修行させてもらったと思います。窯場はダロワイヨで覚え、生菓子はミクニで学んだものも大きいですね。ただし味に関しては、なにより日本を意識していました。というのも、ずっとフランス菓子をやっていると、食べやすさという部分で感じ方が違ってくるんです。例えばダロワイヨの焼き菓子でアーモンドがいっぱい入っているから、もそもそしている。でもフランスではお茶と一緒にたべるものだから、それでいいんです。またミクニでも甘さやアルコールが強めでしたけど、それもフランス寄りの味だから当然なんですね。

でも僕自身はもう少し、日本人の好みの味というものを考えて、それを作っていきたいと思ったんです。味は複雑にしすぎない。そして自分で食べてみて「うわっ、これは甘い!」と思えば、次からは甘さを変えていきます。
ただし甘さも単純に控えめにするだけでは意味がない。レストランの修行時代はあっさり作りすぎて、「こんなの味がしない」と突き返されたこともありますよ。やはりしっかりした味がしなければおいしくないですから。

青山浩士さん また僕はずっと食後のデザートを作ってきたから、口当たりのいいもの、滑らかなものを作ろうという気持ちがあるんです。そこでも単純に食感が軽いだけではだめなんですね。「軽い」と「口当たりのよさ」というのは違うものです。軽くしようと思って、泡を多くするということではなく、なめらかなものを目指していく。そのためにはあえてクリームを完全に乳化させないとかね。どちらかというと、分離するぎりぎりくらいの方が舌の上にのった瞬間、ふわっと溶けておいしくかんじられる。お菓子作りの定石からは外れますが、いつも際どい部分を目指しています。

今の店は自家製酵母のパンを作っている奥さんと、お菓子担当の僕と2人でやっているので種類も少ないし、手が回らないが多いです。でもまだスタートしたばかりですから。将来はもっとゆとりをもってやっていきたいし、いつかデセールも出すような店をやりたいと思います。

おすすめ商品

  • ベル
    ベル

    [420円(税込)]

    フランス製チーズに独自の製法によって滑らかなベースをつくり、ボルドー産白ワインで芳醇な香りを加えたレアチーズケーキ。舌の上にのせたとたん泡雪のように消えてしまう舌触りは、まさに青山シェフの真骨頂。中にはイチゴ、ラズベリー、ルバーブなどを煮込んで作る凝ったソースが封じ込められている。

  • バレンシア
    バレンシア

    [450円(税込)]

    「オレンジを利かせたバタークリームで新作を」と思ったシェフのコリに凝った9層のケーキ。オレンジのビスキュイとマドレーヌ風の生地2種類に、オレンジ風味の軽い2種類のバタークリーム、バレンシアオレンジのナパージュを重ね合わせた芸術品。一口ごとに違う舌触りが展開し、奥行きある味に圧倒される。

  • コンチェルト
    コンチェルト

    [460円(税込)]

    ライム風味のビスキュイを土台にパッションフルーツのジュレを潜ませ、滑らかなフレッシュミントの香りのホワイトチョコレートのクリームで封じ込めた夏向けの新作。トップにはミント風味のイチゴのナパージュを。青山さん一流のまろやかな食感にフルーツのキリッとした酸味が存在感を見せる逸品。

お店の詳細


店鋪情報

  • TEL: 03-5319-0799
  • 住所:東京都豊島区駒込1-23-10 川端ビル
  • アクセス:JR「駒込駅」より徒歩3分
  • 営業時間: 11:00~19:00
  • 定休日:火曜・水曜不定休
  • MAP

アメリカン・ナッツカフェ

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