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パティシエと職人の素顔パティシエと職人の素顔 和菓子編8 菓匠 青柳正家

古き良き江戸の雰囲気を残す向島の料亭街界隈に創業して60年。夕方ともなると芸者衆が行きかう粋な街並みで、洗練された和菓子を作りつづけている「青柳正家」。雑味なく磨かれた伝統の味を守りつつ、若さあふれる創作意欲が光る31歳の三代目店主・須永友和さんに話をうかがいました。

[2008年3月号]

経歴&インタビュー

須永友和さん

<須永友和さん経歴>

1948年
初代で祖父の須永理一さんが「青柳正家」を創業。
1976年
二代目・貢次さんの長男として向島に生まれる。
1994年
高校卒業後、1年間「青柳正家」で働く。
1995年
「京都鶴屋」で3年間修行。その後、大阪「芭蕉堂」で4年間働く。
2002年
青柳正家に戻る。
2005年
三代目として青柳正家を継ぐ。

須永さんの修業時代を教えてください。

この仕事をやり始めたのは小学校6年生くらいからです。最初は洗いものからなんですが、きちんと洗えないと先輩に餡ベラでひっぱたかれて(笑)。でも工場には自分より少し年上のお兄ちゃんのような修行生がいて、彼らにひとつひとつ教わりながら、どこか一緒に遊んでもらうような楽しい感覚でやっていました。

須永友和さん 小学生の頃から早くお菓子を触りたかったので、中学でお菓子の包装をやっとさせてもらえるようになると嬉しくて仕方なかったですね。もう、にこにこしながら仕事をしてました。たとえばビニール袋におまんじゅうを入れるのも、一見簡単なようですが、コツを掴まないと手早くできない。自分の向かい側でやっている職人さんより素早くやりたくて一生懸命でした。また中学2、3年の動き盛りの頃は力仕事が向いているだろうと、製餡をやりました。朝5時に起きて、前の晩に漬けておいた豆を炊くんですが、それがまた楽しくてしょうがない。豆の状態やその日の温度、季節によって炊きあがりが違うので、同じ作業でも決して同じではないんです。それを先輩職人に聞きながら自然と体で覚えていって、自分の中に仕事あんばいができあがってくる。それが我ながらすごいと思えるんです。


高校の頃はやんちゃ坊主だったので、仕事に対しても小生意気でした(笑)。うちの工場はその日の仕事がすべて片づけば、昼の12時でも終わりになるんですね。須永友和さんまだ高校生ですから午後は遊びに行きたくて、少しでも早く仕事をやることに熱中していました。例えば3月3日のおひな祭りなどの特殊なイベント日に、父親が「夜中2時からやるぞ!」と言うと、僕は夜10時から始めるんです。今、これをやっている間に蒸し物をかけて、その間にこの包装をやって…という形で分刻み、秒刻みの仕事を組み立てる。すると動きに一切の無駄がなくなって、正確さをどんどん詰めていけるんです。しかし絶対に雑にはしない。僕は雑な仕事が大嫌いですから。また身近に百戦錬磨の兄弟子がいて、その人と向かい合って一生懸命にやっていました。

7年間の関西修行で得たこととは?

高卒後、修行に出る前に1年間だけ青柳正家で働いて、うちのスタイルをまずしっかりと自分のものにしました。僕の中にひとつの基準を作っておきたかったんです。

京都では父親の関係で紹介していただいた「京都鶴屋」に入りました。3年間いたのですが、やはり和菓子屋さんは1年を通して仕事を経験しないと本当に学んだことにはならないと思うんです。しかも最初の1年はがむしゃらにやるだけなので、それを複数年くり返すことで仕組みが分かってくる。それを体に覚えさせると間違いないんです。

その後、大阪では少し上の立場になって、須永友和さん今度は自分でお菓子をデザインしたり作ったりという仕事をするようになりました。ただ、新しいものを作り出す困難さがあって、プレッシャーも大きかったですね。どうしても、これまで自分の中に入れてきた青柳正家や京都鶴屋さんのイメージが出てきてしまって、新しいスタイルを作る難しさを経験しました。当時は菓子作りに対して、少し天狗になっていた部分もあったんです。でも4年間の修行を通して、まだまだ自分は未熟で、まだまだ先があるということを思い知りました。やはり自分にとってお菓子は大事なもの。和菓子作りは僕にとっての天職で、一生の仕事ですから。

三代目店主として大切にしていきたいこととは?

実際にお菓子を見ていただければわかるんですが、これがまさにうちのスタイルなんです。店の隣は料亭ですし、夕方になると普通に芸者さんが歩いて、通りを青柳正家の袋を下げたお客様がそぞろ歩いている。そんな風景を見ると、やはりうちは特殊な場所でやっているお菓子屋なんだなと思うんです。

また向島という地域は和菓子屋さんが多くて、須永友和さん和菓子を売っている量としてもかなりのものだと思います。「長命寺桜もち」さんや「言問団子」さんなど有名なお店が商売されてますが、それぞれメイン商品がひとつもかぶらない。お客様でも好きな方は何軒もまわって、それぞれの味を楽しむということをされます。それはうちとしても張り合いがあって面白いし、各店が別のものを売っているんですけど、同じ和菓子ですから新たな刺激があります。こういう特殊な環境もいいものですよ。また3月末からの花見の季節になると、この辺りは桜がメインです。和菓子の組合が隅田川で販売をしたりもしますしね。

須永友和さん 最近は和スイーツとか新しい方向を探る発想もあって、確かに面白いと思います。しかしそれはうちのイメージじゃない。うちはデンと構えて、今後も青柳正家のイメージを大切にしながら、先代のお菓子作りを引き継いでいくつもりです。なんでもすぐに移り変わる世の中に「やっぱり青柳さんは変わってないんだな」と思っていただくのも必要かな、と。ただし上生菓子に関しては、同じ青柳正家の流れを汲みつつ、僕の代になって変わってきていると思います。父親とは修行した場所も違いますし、僕は僕のスタイルをもっているので、それが前面に出るようなお菓子です。だいたい15日をめどに新しいものを出していますが、その時の気候をよく考えてデザインするので、うちの上生菓子で季節感を楽しんでいただけたら嬉しいですね。

やはり僕たちがやっていることは、ひとつの文化ですよね。日本人として、日本の食文化に携わっていられるというのが喜びでもあるし、光栄なことでもあります。うちのお菓子は海外のお土産にもよく持っていっていただくので、「これが日本のお菓子なんだ」という風に言われるようになればいいな、という気持ちもあるんです。

おすすめ商品

  • 栗蒸し羊羹
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    小麦粉を主体とした蒸し羊羹は、柔らかくもっちりとした食感が特徴。ちょうど良い大きさに刻んだ栗がたっぷり入って、こぎみよい歯ごたえが楽しめる「青柳正家」の人気商品。

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    高々と盛られた餡で甘味を表現したユニークなスタイルの最中は、初代が開業時に考案したもの。口に入れればバリバリッと香ばしくはじける固めの最中種にひねった餡を入れるのは、代々、店主のみが継承する特殊な技だ。

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    [3,700円(税込)]

    店主が産地へ出向いて仕入れをするという、直径26ミリ以上の高級和栗「熊本産銀よせ」を贅沢に散りばめた、向島料亭街の和菓子屋らしい逸品。栗の歯触りを最高に生かすよう、職人の技で絶妙な固さで仕上げられた羊羹とのバランスが素晴らしい。

お店の詳細


菓匠 青柳正家

  • TEL:03-3622-0028
  • 住所:東京都墨田区向島2-15-9
  • アクセス: 都営地下鉄押上駅より徒歩10分
  • 営業時間: 9:00~19:00
  • 定休日: 日曜祝日
  • MAP

アメリカン・ナッツカフェ

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