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パティシエと職人の素顔パティシエと職人の素顔 和菓子編9 麻布青野総本舗

アークヒルズ、ミッドタウン、新国立美術館。次々と新スポットがオープンし、華やかに変わり続ける六本木の街に、150年以上前から和菓子を作りつづけている老舗「麻布青野総本舗」があります。伝統的な日本のお菓子の美を守りつつ、時代にあった味や食感を大胆に加えているという六代目・青野輝信さんにお話しをうかがいました。

[2008年5月号]

経歴&インタビュー

青野輝信さん

<青野輝信さん経歴>

1973年
東京都港区六本木生まれ。
1995年
青山学院大学経営学部卒業。
1997年
日本菓子専門学校和菓子科卒業。
1997年
京都「仙太郎」にて修行。
2000年~
麻布青野総本舗に戻り、6代目として活躍中。

お店の由来を教えてください。

そもそもは元禄年間(1688~1704年)から栄えていた神田の水飴問屋「青野屋」が遠祖で、安政3(1856)年に、青野きくという女性が麻布市兵衛町(六本木1丁目駅周辺)で和菓子屋を始めたんですね。当時の六本木は大名の下屋敷がいくつもあって、いわゆる別荘地。また増上寺をはじめ神社仏閣が多く、そういうお客様へご用聞きにうかがって、お茶の席などに使う主菓子をメインに納めていました。

青野輝信さん 明治20(1887)年に現在の外苑東通り沿いに移ったのですが、ちょうどその頃、近くに防衛庁や東洋英和女学院ができて、通りには都電が走り、にぎやかな街になってきたんですね。それで、ここに店舗をかまえたのだと思います。残念なことに地震と戦災で店が焼けて、古いものはほとんど残っていないんですが、所在地は変わっていません。戦後も何度か店を直して、現在の店舗は昭和61年に建てたものです。

六代目・青野輝信さんの修業時代をお聞かせ下さい。

小学生の頃から遊び場のようにうろちょろと工場へ出入りして、職人さんたちにお世話になって菓子作りを始めました。それこそ自分の祖父くらいの年齢の人と一緒に並んで、会話を楽しみながらもなかに餡を詰めたりしてたんです。学校とはまた違ったコミュニケーションができますし、何より試食が楽しかったです(笑)。おいしい、おいしいと。そっちが先行していたかもしれません。私自身、記憶がないんですが、幼稚園の時、将来の目標を聞かれて「和菓子屋さんになること」と言っていたそうです。

大学を卒業すると、やはり将来についていろいろ意識するんですね。それで京都、神戸、金沢など旅をして、いろんなお菓子屋さんを見て回りました。それまで身近な店や有名店は知っていましたが、改めて「日本にはいろんな和菓子屋さんがあるんだな」ということに気がつき、私自身もっと幅を広げたいという気持ちがでて、菓子の専門学校へ行くことにしたんです。そこでは洋菓子のことも勉強したんですが、それは今でも役に立つことがありますね。基本的に和菓子らしい和菓子を作るというのが私の中にあって、洋菓子の材料は使わないのですが、たとえば生地の膨らませ方や、しっとり感を保たせる方法などは洋菓子の技法も参考にしています。

その後、東京のお菓子以外のものを知りたいと思い、京都の「仙太郎」さんで2年半ほどお世話になりました。青野輝信さんすると同じ団子を作るのでも製造の工程が違ったり、専門用語も違うんですね。いろいろギャップがあるのが逆に新鮮で楽しかったです。また「仙太郎」さんでは「体にいい食材を使って、お客様に安全でおいしいものを食べていただく」という考え方を教わりました。変えちゃいけないもの。そして守らないといけないものを守るということ。それを「青野」では店舗を広げない中でやっていくということで実行しているんです。今の品質を保った材料で、職人さんにこだわりを持ってやってもらうということを考えると、店舗を過度に広げることはできないんです。ですから基本的にこの店だけで、目の届く範囲でやらせていただくという形にしています。

六代目店主として大切にしていきたいこととは?

六本木の街は変化が激しいので、お客様からは「青野さんだけは変わっていないからホッとする」と、懐かしんでいただくところもあるんです。

青野輝信さん ですから定番の「鶯もち」は変わらず販売しているんですけど、実はその中でも私の代になってからきな粉の風味をよくしたり、餅の配合を少し変えたりということはしているんです。水ようかんでもしっとり感は大切にしながら、甘さを控えてさっぱり感を出したり。また上生菓子も先代の頃に少し変わり、私の代でも少しずつ変わっています。うちでは白さと風味をよくするために薯蕷芋を入れて、薯蕷練りきりにしているんです。「他ではなかなか食べられない」と喜んでくださるお茶の先生もいらっしゃいますね。

どら焼きは2、3年前から復活させました。実は昭和の頃にも作っていたのですが、当時はあまり人気がなかったようなんです(笑)。それを復活させたとき、昔のレシピを引っ張ってくるのでなく、配合は常に研究して、これまでに10回くらいは変えているのではないかと思います。生地のふっくら感を少し増やしたり、餡と生地の堅さをできるだけ揃えて、一体感を作るんですね。口の中に粒あんが残らないような工夫です。

やはり和菓子は食感を楽しむものだと思うんです。豆大福、柏餅など、それぞれ堅さ、食感、風味が違いますし、その中にはベースとなるあんこが非常に大切で、生地に合わせていろいろと変えなければいけません。小豆でも小さめ、大粒、大納言と用途に合わせて使い分け、砂糖の量や煮方もそれぞれ工夫して。もちろん素材も良いものを選ばなければ、すぐに味に出てしまいますから、北海道や九州、京都など各地から集めています。

青野輝信さん 「青野」には場所柄、外国の方や若いお客様も多いのですが、あえて新しいことや洋風のものをやるという考えはありません。味も香りもよく知っているけれど、やはりもう一度食べたい。そしてここでしか食べられないもの。時代に合わせて改良しながら、いい意味でもっともっと和菓子らしい和菓子を今後も追求していきたいと思っています。

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お店の詳細


麻布青野総本舗

  • TEL:03-3404-0020
  • 住所:東京都港区六本木3-15-21
  • アクセス:東京メトロ六本木駅より徒歩5分
  • 営業時間: 9:00~20:00(土曜・祝日9:30~18:00)
  • 定休日:日曜
  • MAP

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