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パティシエと職人の素顔パティシエと職人の素顔 和菓子編5 うさぎや

何度食べても、いつでもおいしく、また必ず食べたくなる。そんなどらやきの元祖として知られる上野の菓子屋「うさぎや」は徹底して良い素材を使い、ぼくとつなまでに昔ながらの姿を守り続けています。

一店舗主義だから支店もなければデパートでも売っていない、まさに上野広小路にだけ存在する味覚。その神髄を4代目店主・谷口拓也さんに聞きました。

[2007年9月号]

経歴&インタビュー

谷口拓也さん

<谷口拓也さん経歴>

1963年
東京生まれ。
1985年
獨協大学フランス語学科卒業。
1988年
一般企業勤務を経て「うさぎや」の工場へ入る。
2002年
「うさぎや」4代目店主となる。

お店の由来は?

初代・谷口喜作は富山県の出身で、安田善次郎氏(安田財閥の祖)と同じ寺子屋だったそうです。安田さんが上京するときにかばん持ちとしてついてきて、しばらく銀行員をやっていたんですね。その後、経理の能力を買われていろんな仕事をしていたようですが、一時期、横浜の馬車道で西洋ロウソクの店をやっていたこともあったらしいです。

どらやき

その頃、お菓子の神様と呼ばれた松田咲太郎さんという、当時のお菓子のコンサルタントのような人と出会い、「じゃあ、菓子屋をやってみよう」という話になったようです。遊び人で人脈が広く、きっと甘いものも好きだったんでしょうね。大正2年、自分は素人の菓子屋だから、素人ゆえに材料は一番いいものを吟味し、ひとつ食べたらお腹がいっぱいになるくらい大ぶりで、価格は廉価にという理念で店を出しました。初代が卯年生まれだったので「うさぎや」という屋号をつけたんです。

「うさぎや」の代表菓子、どらやきについて教えてください。

どらやきは2代目・谷口喜作が昭和の初め、おそらく昭和2、3年頃から作っています。昔のどらやきというのは餡に種がまとわりついた形で、皮が薄かったようです。それを「ひとつ食べておなかいっぱいになるようなどらやきにしよう」ということで、現在のスタイルを考案しました。

うちのどらやきは甘さ控えめで水気の多いとろりとしたつぶ餡を、サクッとした皮で包んで、餡と皮が別れた状態なんです。皮には独特の縦の気泡が入っていますが、粉の配合と火の入れ具合の効果だと思います。薄力粉に、他の種類の小麦粉をブレンドしているので、適度な歯ごたえとさっくりした食感が出るんですね。

谷口拓也さん

どらやきの消費期限2日間ですが、やはり当日のほうが圧倒的においしい。このおいしさを感じてもらいたいから1日数回に分けて焼いて、作りたてのどらやきを出しているんです。できればその場で食べていただくのが最高。お店の中で食べるお客様も大勢いますよ。「今すぐ食べたいので、ひとつください」というお声をいただくと嬉しくなりますね。
翌日になったら餡の水分が皮に移って、本来の味が変わると思います。その場合少しでも美味しく召し上がっていただく方法として、電子レンジで5秒ほど加熱するか、トースターで軽く表面を焼くことをおすすめします。

4代目として後を継いで5年。今後の目標は?

僕は子どもの頃から店に入る以上はきちんと線引きをしなければダメだと思っていたんです。だから店でアルバイトすらしたことがなく、大学時代はテニススクールでコーチをやっていたんですよ(笑)。そしていよいよ家を継ぐことを考えたとき、まず工場に入った。当時、職人が高齢化して人手が足りなかったというのもありますが、やはり店を続けて行くには自分で作れなきゃダメだと。3代目までは自分で菓子作りはしなかったので、僕が初めて工場に入った跡継ぎですね。

谷口拓也さん

当時25歳くらいでしたが、ずいぶん頑張ったんです。工場の誰よりも早く来てトイレ掃除をしたり。先輩の職人たちは15歳からこの道に入った人ばかりですから僕も最初は大変でしたが、25歳で始めてもなんとかなるんですね。それまでの経験を生かした覚え方ができるから、技術がちゃんと身につく。だからうちでは年齢のいった人でもまじめに職人を希望する人なら受け入れているんですよ。最近では30歳で入ってきた男性もいて、よく頑張ってくれています。

今後の「うさぎや」は良い意味での現状維持です。うちのお菓子をきちんと説明して販売していきたいので、ここ一店舗のみでやっていきますし、よそに出店してたくさん売るという発想はありません。でも新しい態度を取り入れることは続けたいと思っています。

紙袋

たとえば最近、新しく紙袋を作ったんです。これまでの「うさぎや」は、お菓子の材料にはしっかりお金をかけるけれど、価格は廉価で、包装にはお金をかけないという考えでやってきました。店でお出しするのは白いビニール袋だけだったんですね。
ただお客様から紙袋を作って欲しいという声が以前からあって、僕としても必要性を感じていた。それで有料のものをご用意したんです。よその和菓子屋さんで有料の袋を出しているところはないけれども、包装の代金がお菓子の中に入っていないという方が価格的にもハッキリするし、これからの時代は必要な時に必要なものを使うという考え方が主流になってくると思います。また原材料名を記したシールもすごく考えて作っているんです。お菓子をパッと見て、たとえばアレルギーのある子どもが安心して食べられるかどうか。その判断をするための情報は大切ですから。
あくまで外見ではなく、本質的なところでキチッとやる。そういう風にしている店というのが、僕は本当の意味でかっこいいと思うんですよ。

おすすめ商品

  • どらやき
    どらやき

    [180円(税込)]

    昭和初期に2代目が考案した「うさぎや」を代表するお菓子。十勝あずきを柔らかめに炊いた絶品のつぶ餡が香ばしい皮で包まれ、できたてをほおばるとこの上なく幸せな気分になれる。

  • 喜作最中
    喜作最中

    [90円(税込)]

    「うさぎ型」と呼ばれる半月の形をした焦がし皮に、蜜漬けの大納言を加えた漉し餡を挟んだ。初代・谷口喜作氏が自分の分身として考案したもの。

  • うさぎまんじゅう
    うさぎまんじゅう

    [160円(税込)]

    さっぱりした漉し餡を包んだ薯蕷まんじゅう。当初は干支のお菓子として12年に一度、正月に作っていたが、愛らしい姿が評判を呼び、昭和62年に現店舗が落成したときから定番菓子となる。

お店の詳細


店鋪情報

  • TEL:03-3831-6195
  • 住所:東京都台東区上野1-10-10
  • URL:http://www.tctv.ne.jp/usagiya/
  • アクセス:JR御徒町駅より徒歩5分、銀座線上野広小路駅・大江戸線上野御徒町駅より徒歩3分
  • 営業時間:9:00~18:00
  • 定休日:水曜
  • MAP

アメリカン・ナッツカフェ

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