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パティシエと職人の素顔パティシエと職人の素顔 和菓子編3 秋色庵 大坂家

創業元禄年間という、東京でも屈指の歴史を持つ和菓子司「秋色庵大坂家」。忠臣蔵の時代から約300年という時を和菓子と共に刻んできた老舗の日常は、21世紀になっても昔と少しも変わりません。店舗裏の工場では早朝から釜に火を入れて蒸気をあげ、餡や餅、生菓子など、まさに江戸そのものの味を作り続けています。

今回は十八代目店主・倉本勝敏さんに、江戸前の和菓子屋ならではの心意気と味にこだわる熱い思いを聞きました。

[2007年5月号]

経歴&インタビュー

倉本勝敏さん

<倉本勝敏さん経歴>

1942年
東京都港区生まれ
1964年
明治学院大学経済学部卒業。
1966年
同業他社で約1年半ほど修行後に「大坂家」へ戻り、十八代目として家業へ専念する。

東京で300年続く老舗の名が「大坂家」というのは?

倉本勝敏さん

もともとは大坂表で商売をしていて、なにかの理由で元禄年間に江戸へ来たらしいんですね。明治時代まではずっと日本橋小網町に店があったんですが、十五代の頃に火事で焼け出され、当時の資料がみんな焼けちゃったんです。祖父の話では昔のものがいっぱいあったというので、もったいないことをしました。
それから港区芝の金杉橋に移ったら関東大震災にあって、現在の三田に移転したんです。ここでも東京大空襲にあってますから、何度も焼けてますね。現在の店舗は昭和64年に建て直しました。

うちの菓子は店舗の裏の工場で毎朝作っています。僕と古くからの職人、そして十九代目の3人で、忙しい時は朝3時頃から釜に火を入れています。僕はここで生まれ育っているから子どもの頃から菓子作りはなんとなく見ていて、手伝いを始めたのは中学生頃からでしょうか。最初は最中作りから。「これでいいの? あれでいいの?」と職人に聞きながらやってました。子ども時分から店の後を継ぐというのはわかっていて、小学校で絵なんかを描かされると、たいがい和菓子屋の絵を描いてましたね(笑)。

老舗の味を守るために心がけていることは?

やはり材料へのこだわりでしょう。本当のことを言うと、僕が若い時と現在とでは材料が少しずつ変わってきているんですね。例えば小豆にしても今は品質が一定しているけれど、香りがない。それで僕はわざわざ十勝産でも一番奥地でできる小豆を取るんです。寒い場所なので土の中に入っている時期が長いから、ちょっとは味が違うかなと思います。

白小豆は問屋を通さず、群馬県の産地で直接買っています。最初は土産屋なんかで売っている白小豆をちょっと買って味を見て、気に入ったら「これをたくさん欲しいんだけど、なんとかできないの」と話を持っていくんですよ。また定番菓子の「若草」で使っている柚子は奥多摩産です。柚子は高知あたりのものが有名ですが、奥多摩の柚子は小粒でも香りがいいんです。毎年十月頃に仕入れて、うちですりおろして砂糖で煮て保存してあります。これも自分で見つけてきた味です。旅行が好きで、あちこちへ行って探しているんです。

「大坂家」ならではの和菓子とは?

うちの菓子は素材を吟味していますが、甘さは昔ながらです。種類は古くからのものもあれば新作もあって、上生菓子は週替わり、月替わりなど年間百種類以上。他にもいろいろやるので二百種類くらいはあるでしょうね。木型で菓子を作るのは楽しいですよ。色を入れるのもひとつひとつ違ってきますし。この木型も三百種類くらいあると思います。

倉本勝敏さん

「大坂家」の味の特徴は味噌でも黒糖でも、なんでもいっぱい使っちゃうんですよ。たとえば柏餅の味噌餡で、香りづけにほんの少しだけ味噌を入れるというのはありえない。祖父の頃から「入れるんだったら、いっぱい入れろ。それがうちの味なんだ」と。だから柏餅の味噌餡は、昔からずっと京都の白味噌をどんと使って、しっかりした味噌味です。なにしろ餡が味噌の色をしちゃってますから(笑)。

大正末の頃、十六代が小豆餡、黒糖餡、栗餡の「三色(みいろ)最中」を考案したんです。それが流行して、昭和初期にあちこちで似たようなものをやり始めた。すると十六代目が「冗談じゃない、ふざけやがって!」と。江戸っ子ですからね(笑)。それで「秋色(しゅうしき)最中」という名前にして商標登録を取りました。この最中の黒糖餡にも、沖縄黒糖をどっさり入れてます。最近は手間のかかる黒糖を作る人が減って、今年の生産量は去年の8割くらいしかないんです。僕も沖縄の産地を見に行きましたが、確かに作るのは大変ですよ。それでもなんとか集めてます。「味噌は味噌らしく、黒は黒らしく」というのがうちの味ですからね。

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お店の詳細


店鋪情報

  • TEL:03-3451-7465
  • 住所:東京都港区三田3-1-9
  • URL:http://www.o-sakaya.com/index.htm
  • アクセス:都営地下鉄三田駅より徒歩5分 JR田町駅より徒歩7分
  • 営業時間:9:00~18:30(土曜18:00)
  • 定休日:日祝休
  • MAP

アメリカン・ナッツカフェ

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